石巻の今 ときどき世界

地元新聞の元記者が石巻・東松島・女川の観光や食、漫画、猫、震災・防災などの地元情報を紹介します。ときどき世界のまち歩きも書いていきます。

大川伝承の会定例語り部ガイド今年もスタート

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学校防災と避難の判断・行動を考える

  東日本大震災の津波で児童・教職員合わせて84人が犠牲となった宮城県石巻市の旧大川小学校で1月27日、大川伝承の会の語り部ガイドが行われた。大川伝承の会共同代表の佐藤敏郎さん、鈴木典行さんらが敷地内を案内しながら、参加者に学校防災や災害時の避難に向けた判断と行動の重要性を考えるよう語り掛けた。

 茨城県の高校野球部がボランティア

  語り部ガイドは、犠牲となった児童の遺族らで結成した大川伝承の会が2016年12月からほぼ月1回、定期的に開催している。個人・団体を問わず予約なしで参加できる。2019年の1回目は通算20回目となった。この朝は雪が薄ら積もったが、2011年8月から毎年夏と冬の2回、ボランティアに訪れている茨城県立佐和高校(ひたちなか市)野球部の33人が、開会までに案内経路を除雪した。

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 開始前に茨城県立佐和高校野球部員がガイドコースを除雪

 ガイドに参加したのは佐和高校野球部員や一般約130人。遠くは鹿児島県からの参加者もいた。佐藤さんのあいさつ、犠牲者への黙とうなどの後、佐藤さん、鈴木さん、それに東日本大震災当時、高校生だった永沼悠斗さんが敷地内を案内しながら交互に、大震災前の大川小学校や周辺地区の様子、大震災当日やその後の家族を探す活動などを語った。

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 大きな写真を使って説明する佐藤敏郎共同代表

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 犠牲者に黙とう

 小学校の思い出や古里の大切さ語る若者

 永沼さんは「児童はみんな一輪車を乗ることになっていたので、楽しみだった。おしゃれな校舎だったけれど、廊下は曲がって長く、掃除が大変だった。つらい思い出もあるけれど、楽しい思い出がいっぱいある」と学校や古里を大切に思う気持ちを伝えた。

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 思い出や震災体験を語る永沼悠斗さん

 何があったのかを知ることが「未来を拓く」

 佐藤さんは「今、あの大川小学校と言われる特別な存在になっているが、あの日までは特別ではない、どこにでもある日常があった」と話し、誰にでも突然、災害に見舞われる危険があることを指摘した。東日本大震災では、学校管理下で犠牲を出したのは大川小学校だけだった。「先生たちも一生懸命だったはず。避難のための情報があった。にもかかわらず、地震発生から50分間も校庭から避難行動に移せなかったこと、その時、何があったのかを知ることが、大川小学校の校歌のタイトル『未来を拓(ひら)く』ことにつながる」と訴えた。

 また「判断と行動が命を救う。想定外のことが起きた時、判断と行動にギアを上げていく必要がある。先生は子どもたちを預かる使命がある。(石巻市が整備を進めている)この震災遺構にはそのためのヒントがたくさんある」と語った。

 命を守るための行動をここで学んで

 鈴木さんは、大川小学校に通っていた自分の娘を含む児童の捜索の様子や、多くの証言を基にした震災直後の学校の状況などを語った。その中で、防災教育や学校防災の重要性を訴えた。「津波は何回も襲ってくる。一番高い津波は第1波ではなく午後7時ごろだった」と、津波に関する注意を促した。「私たちは悲しい出来事だけを語っているのではない。命を守るためにどんな行動をしなければいけないのか、ぜひここで学んでほしい」と呼びかけた。

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 学校防災の重要性を訴える鈴木典行共同代表

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山への避難を体験

  佐和高校野球部監督の大川修一教諭は「当初は何か力になれば、と来ていたが、今は命の大切さや自立心、人のために尽くすことを感じる機会になっている。われわれ教師にとっても、その在り方を学び確認する場になっている」と話していた。

 大川地区の街並みを再現した模型

 旧大川小学校の隣接地には一般社団法人「長面浦(ながつらうら)海人」が設置した「大川地区『ふるさとの記憶』まちなみ復元模型」の仮展示施設がある。被災地域の500分の1の白い模型に住民や学生が色付けし、思い出や出来事などを記入した旗を立てたもの。展示しているのは4集落あるうちの2集落分。参加者はかつてあった街並みを、模型を通じて想像していた。

  希望者は河口に近い長面地区に移動し、長面浦海人が経営するレストラン「はまなすカフェ」で、長面浦の名産のカキを使ったカキフライ定食を味わった。食べている間、大川伝承の会の三條すみゑさんが長面地区のカキや祭り、震災時の様子などを話した。

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街並みを再現した模型(大川小学校周辺)

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 模型を説明する遠藤仁雄さん

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 北上川河口に近い長面地区を説明する三條さん

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「はまなすカフェ」のカキフライ定食(800円)。長面浦で養殖されるカキは漁師自慢の味

 まずは現場で聞くことから

 筆者が大川小学校の遺族の方たちと話すようになったのは2年半ほど前から。震災伝承活動のネットワークづくりにかかわっていて、佐藤敏郎さんにその活動に参加してもらってしてからのこと。地元新聞社に勤務していたが、震災直後に編集部を離れたこともあり、大川小学校の遺族の方と話す機会はなかった。なにより自分の心にためらいがあった。わが子を失った計り知れない悲しみを背負わされた彼らとどんな話ができるのか。自分が当時の大川小学校の教師だったら、子どもたちを守れただろうか。全く自信がなかった。佐藤さんと出会い、その後、震災伝承活動を通じて会話ができる遺族の方が増えた。考え方は人それぞれ。それでも震災伝承活をしている人たちの「災害からできるだけ多くの命を守りたい」という思いは共通している。現場でいろいろな声に耳を傾けたい。

 

◆大川伝承の会語り部ガイド2019年日程

※全て午前10時から旧大川小学校(石巻市釜谷字山根1)

※予約不要、参加無料

 3月17日(日) 4月14日(日) 5月19日(日) 6月23日(日)

7月21日(日) 9月16日(月・祝) 10月27日(日)

12月15日(日)

 旧大川小学校の遺構整備に関しては下記の過去記事をご参照ください。 blog.ishinomaki-joho.com